『京の熟成山椒』
痺れに品格を
京都の痺れ文化は、一点から始まったものではありません。それは、山椒の長い歴史、京料理による洗練、そして名物・ちりめん山椒のような家庭の味。──その三つが重なり、時を超えて磨かれてきた、日本人の“舌の記憶”そのものです。古くは室町時代。京都の料理書には「鰻に山椒」の記述が見えます。
それは、ただ辛味を添えるためではなく、香りと痺れの“間(ま)”を愉しむ、美意識の表れでした。
そして江戸の世。
山椒は料理の仕上げに欠かせぬ存在となり、やがて京の料亭では、山椒を“香りで締める”技が生まれました。
昭和には「ちりめん山椒」が誕生し、痺れは家庭の食卓にまで降りてきた──
それが、京都の痺れ文化の系譜です。
けれど、私たちは思いました。「この痺れを、もう一度、革新したい」と。そこで選んだのは、
四川の青山椒・ネパールの香り高い山椒・華北の深みある花椒。この三大山椒を、京都の工房で低温熟成。
発酵ではなく、“香りを眠らせ、旨みを目覚めさせる”ための時間を与えました。数ヶ月、いや、何十回にもわたる試作を経て、完成したのは──ただの山椒ではなく、香り・痺れ・旨みが三位一体となった「京の熟成山椒」。ひと振りで、鰻は艶やかに、牛肉は凛として、カップラーメンすら、料亭の一皿に変わる。
それは“辛味”ではなく、余韻を楽しむ痺れ。──京都が数百年かけて磨き上げてきた、静寂の中の刺激。
香りの山椒、刺激の花椒。異なる土地で育ち、ひとつの痺れに辿り着いた。“国境を越えた旨痺れ”のブレンド。その品格を、いま一瓶に。